「ピザを10回言ってみて」クイズに隠された心理学|プライミング効果とは?

「ピザって10回言ってみて」――
誰もが一度はやったことのある有名なひっかけクイズです。
「ピザ、ピザ、ピザ…」と繰り返したあとに、「腕と手の間にある関節は?」と聞かれると、思わず「ひざ!」と答えてしまった経験はありませんか?
正解はもちろん「ひじ」ですが、多くの人が同じ間違いをしてしまいます。
実はこの現象、単なる遊び心だけでなく、心理学的に説明できる重要な効果が隠れているのです。
その名は「プライミング効果」。無意識のうちに、直前の言葉やイメージが次の答えや行動に影響を与えてしまう現象です。
この記事では、この「ピザを10回クイズ」を入り口にして、プライミング効果の仕組みと、私たちの日常生活に潜む“心理的な仕掛け”について分かりやすく解説していきます。
クイズで体験する“プライミング効果”
プライミング効果とはどんなものか、実際にクイズを通して見てみましょう。
例① ピザを10回言ってみて
「ピザ、ピザ、ピザ…」と10回繰り返したあとに、
「腕と手の間にある関節は?」と質問されると――
多くの人が条件反射のように「ひざ!」と答えてしまいます。
本当は「ひじ」なのに、直前の「ピザ」の響きに引っ張られてしまったわけです。
例② みりんを10回言ってみて
「みりん」を10回言ったあとに、「鼻の長い動物は?」と問われると、
正解は「ゾウ」なのに、「きりん!」と答えてしまう人が少なくありません。
例③ 動物を思い浮かべる
「キリン・シマウマ・ライオン・チーター」など、動物の名前を1分間考えたあとに、
「大きいものをひとつ思い浮かべて」と言われると、
多くの人が「ゾウ」を思い浮かべます。
「大きいもの」と言われただけなのに、“動物”という枠組みで考えてしまうのです。
これらの例はすべて、直前に与えられた言葉やイメージ(プライマー)が、その後の答え(ターゲット)に影響していることを示しています。
つまり、私たちは意識せずとも「先に見たり聞いたりしたもの」に大きく引っ張られてしまうのです。
次の章では、この現象を心理学的に整理した「プライミング効果」の仕組みを解説していきます。
プライミング効果とは?【心理学の解説】

先ほど紹介した「ピザを10回言うクイズ」や「動物を思い浮かべてゾウと答えてしまう現象」は、心理学でいう プライミング効果(Priming Effect) によって説明できます。
プライミング効果の定義
プライミング効果とは、ある刺激(プライマー)が、後に出される刺激(ターゲット)に対する反応を無意識のうちに影響する現象のことを指します。
つまり「先に与えられた情報が、その後の判断や行動を自然に誘導してしまう」のです。
特徴① 無意識に起こる
私たちは「自分で答えを選んでいる」と思っていますが、実際には直前の刺激に大きく左右されています。しかも、その影響は自覚できないことが多いのです。
特徴② 言葉・イメージ・環境すべてが影響する
プライマーとなるのは「言葉」だけではありません。
- 聞いた単語
- 見たイメージ
- 置かれている環境
といったあらゆる刺激が、後の答えや行動に作用します。
具体例:クイズでの影響
- 「ピザ」と繰り返し言った → 音の似た「ひざ」と答えてしまう
- 動物の名前を並べた → 「大きいもの」と言われても「ゾウ」と答える
いずれも、意識的に「間違えた」わけではなく、無意識に答えが誘導されてしまった結果です。
このように、プライミング効果は単なる遊びのクイズだけでなく、私たちの日常生活のあらゆる場面で働いているのです。
次の章では、この効果が実際にどのように利用されているのか、身近な事例を紹介していきます。
日常生活でのプライミング効果の実例
「プライミング効果」はクイズの中だけでなく、実は私たちの身の回りで日常的に使われています。知らないうちに「選ばされている」ケースも少なくありません。ここでは具体的な例をいくつか紹介します。
不動産の内見
不動産屋さんが物件を紹介するとき、本命の物件をいきなり見せることは少ないものです。
まずは似た条件で“あえて”少し劣った物件を見せ、そのあとに本命を案内します。
こうすることで直前に見た悪い物件が頭に残り、本命の物件がより魅力的に感じられるのです。
エナジードリンクの陳列
レッドブルやモンスターといったエナジードリンクは、スーパーやコンビニで「ジュースコーナー」ではなく「栄養ドリンクコーナー」に並んでいることが多いです。
同じ値段でも、ジュースとして見れば高いと感じるのに、栄養ドリンクと並んでいれば「むしろ安い」と感じてしまう。これもプライミング効果を利用した販売戦略です。
ショッピングでの“比較”
家電量販店で最新モデルの高額商品を見せたあとに、少し安いモデルを勧められると「お得に感じて」購入してしまうことがあります。
直前の高い価格がプライマーとなり、実際の値段判断をゆがめているのです。
このように、プライミング効果は私たちが気づかないところで行動を左右しています。
単なるクイズのネタではなく、マーケティングや販売戦略、さらには人間関係にまで応用されている心理効果なのです。
私たちはどのように“操られている”のか?

プライミング効果は、日常生活のあらゆる場面で私たちの判断や行動に影響を与えています。しかも、その多くは無意識のうちに働いているため、自分では気づかないことがほとんどです。
購買行動をコントロールされる
お店では「どの商品をどこに置くか」が綿密に計算されています。
例えば、スーパーの入り口に新鮮な野菜を並べると「健康的な食生活」のイメージがプライマーとなり、その後の買い物でヘルシー志向の商品が選ばれやすくなるのです。
比較対象で価値判断を操作される
高価な商品を先に提示されたあとで、少し安い商品を見せられると「お得に感じてしまう」。
これは値段の高低を“絶対的に”見ているのではなく、直前の比較対象に強く引っ張られているからです。
イメージ戦略に誘導される
CMや広告もプライミング効果を意識して作られています。
「爽やかな青空」や「笑顔の家族」を見せた直後に商品を紹介されると、その商品自体にポジティブな印象を抱きやすくなるのです。
つまり私たちは、「自由に選んでいるつもり」でも、実際には環境や直前の情報によって大きく操られているのです。
しかしこれは「怖いこと」ではなく、心理学を知っておくことで自分の選択をより冷静に見直せるチャンスでもあります。
心理学を勉強に活かすヒント

プライミング効果は日常生活や買い物だけでなく、勉強にも応用できるのをご存じでしょうか?無意識に働くこの効果をうまく利用すれば、集中力や暗記力を高めることができます。
勉強モードに入りやすくする“きっかけ”を作る
- 勉強を始める前に、必ず机を整える
- いつも同じ音楽や香りを使う
覚えたい言葉を繰り返して“刷り込む”
- 英単語や理科の用語を声に出して何度も言う
- 自分で小テストを作って繰り返す
ポジティブな言葉で自分をプライミングする
- 勉強前に「やればできる」「この範囲は得意」と声に出す
- ネガティブな自己暗示を避け、ポジティブな言葉を繰り返す
このように、心理学をちょっと意識するだけで、勉強の習慣づくりや暗記の効率アップに役立ちます。
「人に操られる」のではなく「自分をいい方向に操る」――これが勉強へのプライミング効果の活かし方です。
まとめ|心理学を知れば、勉強も生活ももっと面白くなる
「ピザを10回クイズ」のような単純な遊びの中にも、心理学的な仕組みであるプライミング効果が隠れています。
無意識のうちに行動や判断を操られてしまう――そう聞くと少し怖いかもしれませんが、逆に言えば この仕組みを知ることで、自分の行動をより良い方向に導ける ということでもあります。
日常生活では、買い物や広告、会話の中で無数のプライミングが仕掛けられています。
そして勉強においても、繰り返し声に出したり、ポジティブな言葉で自分を鼓舞したりすることで、暗記や集中力に役立てることができます。
心理学を知ることは、単に「騙されない」ためではなく、自分を前向きにプライミングしていくためのヒントになります。
ちょっとした工夫で、生活も勉強も、もっと楽しく、もっと成果の出やすいものに変えていきましょう。