櫻學舎の高橋です。
今日は皆さんの生活を支える科学技術についてご紹介します。
今では、皆さんの周りに身近なスマートフォンや携帯ゲーム機、ノートパソコンは、小さな町工場がなければ無かったかもしれません。
その発明、今では私達の生活に大きく貢献しています。今皆さんが持っている、スマートフォンや携帯ゲーム機の中には、リチウムイオン電池というものが使用されています。
この電池は小さいながらも、大量の電力を蓄電できます。
この電池には、物理学・化学・電気学など様々なものが利用されていますが、それ以外にも職人さんの知恵が詰まっています。
今、小学生、中学生そして高校生の皆さん、一度ご両親に昔はどうだったのか聞いてみてください。
『携帯電話が大きかった』、『パソコンが重かった』、『バッテリー1日保たなかった』と話を聞くはずです。
今は何気なく使用されているリチウムイオン電池がどれだけ世界を変えたのか、そして世界を変える発明が日本から出たものだと知ると身の回りにたくさんの学びのキッカケが転がっていることになります。
では、何故このリチウムイオン電池は世界を変えたのか紹介します。
電力を溜めるのには、化学が利用されています。
電池内部には、電極と電解液が入っています。
小学校でも電気分解の実験や中学校になると電池の実験をします。
基本的には原理は同じですが、学校の実験で行うの銅板やステンレス板を使用して豆電球を点灯させるものです。
リチウムイオン電池は、電極にリチウムという希少金属と炭素棒を使用しています。
また、電解液も入っていますが、最近では吸水性ポリマーつまり紙おむつの原料が使用されています。
たった、これだけでも身の回りにある凄い化学です。
実は、紙おむつの吸水性ポリマーも化学が利用されていて、日本の技術力は世界トップレベルです。
しかし、リチウムイオン電池でもっと凄いのが物理学が利用されています。
そもそも、昔のリチウムイオン電池は金属ケースの中に電極と電解液が入っていました。
しかし、液漏れによる発火や爆発事故が発生したため、大量の電力を蓄電出来ませんでした。
液漏れの原因は、ステンレス製ケースに隙間があったためです。
皆さんは、箱やバケツの水を溜めようとした際に穴やヒビがあったら、テープなどで塞ぐと思います。
しかし、リチウムイオン電池は、この方法でもダメでした。
ステンレス板を溶接しても隙間を100%塞ぐことができる保証はありません。
また、ケースを作る手間暇が掛かります。
そうすると値段が高くなってしまいますね。
でも、日本の町工場の職人には、1枚のステンレス板から金属を溶接せずに加工する技術がありました。
それは、金属の絞り加工と呼ばれており、継ぎ目が無い加工方法です。
金属をプレス加工すれば継ぎ目はなくなります。
しかし、折り曲げた部分の厚さが変わってしまいます。
厚さが変わると安全に使用出来ないため。絞り加工の技術が応用されています。
ステンレス板の厚さを一定に保ち、ケースを作れたことが今日の私たちに生活を変えたのです。
実はこの加工には物理学が利用されています。
金属が本来もつ延性を利用しています。
金属は伸びるため厚さを変えたり、形を変えれるのもこの延性のお陰です。
スマートフォンや携帯ゲームで遊ぶのは楽しいと思います。
しかし、皆さんの使用しているものにどんな科学が利用されていて、どんな技術があるのか調べるのは楽しいと思います。
将来の自分が、どんな職業を選択するか考えることにもなります。
一度、リチウムイオン電池が無かった場合の世界を想像してみてはどうでしょうか?
少なくとも、そのことは自分の両親も先生となります。