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古文における敬語の使い方~敬意の方向~ | 定額個別の櫻学舎

皆さんこんにちは!櫻學舎の早坂です。

前回間違えやすい敬語の話をしましたが、今回は古文における敬語表現の仕方についてお話したいと思います。

古文を読み解く中では主語動作の主体(または対象)敬意を表す対象などが非常に重要になってくるのですが、特に古文においては敬語の使われる場所や使い方によってそれらが分かってくるので、しっかり覚えて文章を読むようにしましょう(^^)

 

敬語のおさらい~尊敬語・謙譲語・丁寧語~

まず前回の記事にも敬語とは何なのか?ということを書いたので、一度おさらいしておきましょう。

敬語とは、簡単に説明すると『話している相手』や、『話に登場する人物』を丁寧に扱っているということをあらわす(=敬意を示す)ための言葉です。

それではこれらを頭に入れた上で次に進んでみましょう。

 

敬意の方向

次は先程の3種類の敬語を誰から誰にという目線でもう一度見てみると、次のようになります。

 

 

そしてこれら3種類の敬語は、地の文で使われているのか・会話文で使われているのかで敬意の主体(尊敬する気持ちを持っている人)が判断できます。

地の文の場合

地の文において敬語が使われている場合、その文章の書き手(作者)からの敬意を表します。

実際に例文を見てみましょう。

 

★例文★

  1. 牛若丸、笛吹き給ふ。
  2. 若君、姫君に文書き奉る。
  3. うれしと思ひ侍り。

 

1の例文は「吹く」という動詞の下に尊敬の補助動詞「給ふ」が付いているので、現代語訳は「お吹きになる」「吹きなさる」のようになり、敬意の対象は作者から「牛若丸」へ、となります。

2の例文は「書く」という動詞の下に謙譲の補助動詞「奉る」が付いているので、現代語訳は「お書き申し上げる」「書いて差し上げる」のようになり、動作を受ける人が「姫君」なので敬意の対象は「若君」から「姫君」へ、となります。

3の例文は「思ふ」という動詞の下に丁寧の補助動詞「侍る(文中:侍り)」がついているので、現代語訳は「思います」「思うのです」のようになり、敬意の対象は作者から読み手へ、となります。

 

★現代語訳★

  1. 牛若丸が、笛をお吹きになる。
  2. 若君が、姫君に手紙をお書き申し上げる。
  3. うれしいと思います。

 

会話文の場合

会話文において敬語が使われている場合、その会話の話し手からの敬意を表します。

こちらは会話文と地の文それぞれでの意味の違いが分かる例文を見てみましょう。

 

★例文★

  1. 女房が中宮にそのことを申す。
  2. 御使が「女房が中宮にそのことを申す」と言ふ。

 

1の例文は先程までのものと同じく地の文ですね。「言ふ」の謙譲語「申す」が付いていて動作を受ける人は「中宮」なので、敬意の対象は作者から中宮へ、となります。

2の例文は新たに出てきた会話文の例ですね。今回は「御使」が<女房が…>と話していて、実際に動作をする人は「女房」、動作を受ける人は「中宮」なので、敬意の対象は「御使」から「中宮」へ、となります。

 

★現代語訳★

  1. 女房が中宮にそのことを申し上げる。
  2. 御使いが「女房が中宮にそのことを申し上げる」と言う。

 

二方向への敬意

これまではある一方からもう一方への敬意の表し方を解説してきましたが、今度は一方から二方向への敬意の表し方を解説します。

この表現は、書き手(または話し手)が、動作をする人と動作を受ける人の両方に敬意を表現するときに用いられます。

例文を見てみましょう。

 

★例文★

  1. (かぐや姫は)いみじく静かに、公に御文奉りたまふ。
  2. (北山の僧都が尼君に話しかけている会話文で)「この世にののしりたまふ光源氏、かかるついでに見 たてまつり たまは むや」

 

1の例文は”かぐや姫が天皇に手紙を出す”という一つの動作について、作者から「与ふ」の謙譲語「奉る(文中:奉り)」で手紙を受け取る天皇への敬意を、また尊敬の補助動詞「給ふ」で手紙を出すかぐや姫への敬意を表しています。

2の例文は、動作をする人は「尼君」であり、動作を受ける人は「光源氏」となります。動作の「見る」に謙譲の補助動詞「奉る(文中:たてまつり)」がつくことで、話し手である「僧都」から動作を受ける人である「光源氏」への敬意を、また尊敬の補助動詞「給ふ(文中:たまは)」がつくことで動作をする人である「尼君」への敬意を表しています。

 

★現代語訳★

  1. (かぐや姫は)たいそう静かに、天皇にお手紙を差し上げなさる。
  2. 「この世に評判の高くていらっしゃる源氏様を、このようなついでに見申し上げなさい。」

 

あわせて覚えたい敬語表現

二重敬語

こちらもあわせて覚えておきたい大事な敬語表現です。尊敬語を二つ重ねて用い、動作をする人に対して特別高い敬意を表します。最高敬語ともいわれます。

 

★例文★

  1. 殿、見させ給ふ。
  2. 帝、歩ませ給ふ。

 

1,2の例文は共に、尊敬の助動詞「す(文中:せ)」尊敬の補助動詞「給ふ」がつくことで「~なさる」「お~になる」と訳することができ、1の例文では作者から殿へ、2の例文では作者から帝への敬意を表しています。

 

★現代語訳★

  1. 殿が、ご覧になる。
  2. 帝が、お歩きになる。

 

絶対敬語

絶対敬語とは、特定の相手に対してのみしか使われない敬語のことで、敬意の対象が特に記されていない場合でも、特定の敬語が用いられることで敬意の対象が特定されます。

 

★絶対敬語の例★

  1. 奏す」=(天皇・上皇に対して)「申し上げる」※謙譲語
  2. 啓す」=(皇后・中宮・皇太子に対して)「申し上げる」※謙譲語

 

自敬表現

天皇や上皇などのきわめて身分の高い人が自分自身を高める(=自分から自分への敬意を表す)ために使う表現です。

表現の仕方は(1)自分の動作に尊敬語を用いる場合 (2)相手や第三者の動作に謙譲語を用いる場合 の二つがあります。

 

★自尊敬語の例★

君なのめならず御感なつて、「なんぢやがて夜さり具して参れ。」と仰せければ、

 

この例文では、動作の受け手である「帝(文中:君)」が自分自身に対して行くの謙譲語「参る」を使っているため、敬意の方向は帝から帝へとなり、上記の(2)の表現にあたります。

 

★現代語訳★

帝は並々ならぬほどお喜びになられ、「ではすぐに、お前が今夜(小督を)連れて参れ。」とおっしゃるので、

 

おわりに

いかがでしたか?古文には敬意の表し方が沢山あることが確認できたかと思います。

最初にも書いた通り、古文を読み解く中では動作の主体や対象、敬意を表す対象などが非常に重要になってきます。古文の敬語表現にはこれらが非常によく表れているので、何度も確認しながらしっかりと覚えていくようにしましょう!

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