櫻學舎の高橋です。
昨日6月30日のヤフーニュースに「<文科省>奨学金検討へチーム…返還なし、来月に初会合」という記事が掲載されていたので、詳細をご紹介します。
本日ヤフーニュースのトップに以下のようなニュースが掲載されました。
<文科省>奨学金検討へチーム…返還なし、来月に初会合
文部科学省が返還不要の給付型奨学金制度の創設に向けた検討チームを新たに設置することが29日分かった。教委や大学関係者、奨学金に詳しい専門家らで構成し、7月4日に初会合を開く予定。早ければ、来年度予算の概算要求をする8月末までに給付対象者や給付額などをまとめる。
参照:ヤフーニュース
これまで奨学金は利息無しの第一種と利息ありの第二種にわかれていました。
ですが、これは日本学生支援機構という独立行政法人が運営するもので、国独自で給付型の奨学金は今までなかったため、今回話題のニュースになったわけですね。
これ、どれだけすごいことかというと、日本では奨学金というと多くの方が返還義務のある日本学生支援機構の奨学金を想像すると思いますが、実は世界では奨学金は国が予算を組み、返済の必要がない給付型のものを「奨学金」と言います。
給付型なので、返済の必要はないんですね。
一応日本では大学独自で給付型の奨学金を行っているところはありますが、ごく少数です。
日本学生支援機構のように給付型ではなく返済を求められるものは「学生ローン」といいます。
こちらは「大学教育に対する国からの支援のうち、家計へのものに対する援助の割合」を表にしたものです。
家計への補助がOECDの平均より高いのは分かりますが、そのほとんどの補助が学生ローン(表の青い部分)で占められています。
「世界経済をけん引する人材を育成しよう」と言っている日本の公的奨学金が世界的に見たら最低水準なのは、残念ですね。
こちらは「大学生のうち、大学学費と給付型奨学金をもらう人の割合」を散布図にしたものです。
この図から、学費が無料、もしくは定額の国であり、さらに給付型奨学金を設けている国が多く存在していることが分かります。
デンマーク、ドイツ、フィンランド、アイルランド、ノルウェー、ポーランド、チェコ等がそれに当たります。
ほとんどがヨーロッパの国ですね。
むしろ、日本のような学費が高く、奨学金制度も整っていない国は少数派だということが分かります。
ちなみに国が運営する給付型奨学金がないのは、国連加盟国160か国の中で日本とマダガスカルのみらしいです。
高校を卒業して就職するという時代は終わり、現在は4人に3人が大学、もしくは専門学校に進学する世の中になっています。
そのため宮城県でも各大学で新学部、新学科の設立など、少子高齢化とは言われていても進学する人自体の割合は多くなってきているので、大学側も時代に合わせて変化しつつあります。
ところが、家計の平均年収はこの10数年で467万円(平成9年)から409万円(平成23年)と13%も減少しています。
こういった背景から、奨学金を借りる人は年々増えています。
ですが、この奨学金というものは、要するに返済の必要がある「借金」です。
近年、この奨学金を返済できない人が多くなり、社会問題化してきています。
日本学生支援機構によると奨学金の滞納者は約33万4000人で、滞納額は925億円にも上るそうです。
奨学金を受けているのが約132万人なので、滞納者は全体の25%、およそ4人に1人が滞納しているということになります。
私の知り合いでも奨学金を滞納・延滞している人間が数人います。
そのような奨学金、返済できなくなるとどうゆうことになるのでしょうか?
奨学金が払えなくなるとどうなるのでしょうか?
クレジットカードでも返済が滞ると督促状が来るのは当たり前ですね。
ただ、本人以外にも連帯保証人に連絡がいくのは避けたいものです。
個人信用情報機関に登録されるというのは、要するにクレジットカードが発行できなくなるということになります。
また、ローンが組めなくなるため、車や住宅を購入するときに借入を受けることができなくなります。
それでもいいという人はいいですが、ライフイベントの一つとして車の購入や住宅の購入は大事にしたいという人は多いと思うので、こういった事態にもなりかねないことを頭の片隅に入れておいた方がよさそうです。
2004年度に58件だった訴訟の件数は、2012年度は6193件にのぼった。災害や病気、失業などで返済が難しい人のために「返還猶予」の仕組みがあるが、その猶予期間が従来より長くなった2014年度は、訴訟件数が5039件に減った。だが、依然として高い水準のままであることに変わりない。
上記は2016年1月31日のライブドアニュースの記事です。
訴訟件数は2004年から2012年の8年の間に107倍まで膨れ上がっています。
バブル以降からの長いデフレ状態、2008年のリーマンショック、シャープやソニー等の大手企業の倒産・大量リストラ、東日本大震災など、雇用が安定しない世の中で返済が難しくなっている人がたくさん存在します。
中には奨学金のために風俗店でアルバイトをする女子学生、また、返済できなくなったために自己破産申請をした北九州市の40歳男性もおり、確実に社会問題化しています。
このような社会問題を受けて給付型奨学金を国で設立しようと動き出したのが今回のニュースになります。
奨学金を延滞している人たちはどんな人たちなのでしょうか?
<奨学金を借りている本人の職業> (単位:人/%)
■常勤社(職)員
・延滞者:1,475人/36.2%
・無延滞者:1,708人/67.9%■任期付常勤社(職)員 (※1)
・延滞者:343人/8.4%
・無延滞者:141人/5.6%■非常勤社(職)員 (※2)
・延滞者:598人/14.7%
・無延滞者:187人/7.4%■派遣社員
・延滞者:269人/6.6%
・無延滞者:74人/2.9%■自営/家業
・延滞者:273人/6.7%
・無延滞者:63人/2.5%■学生(留学を含む)
・延滞者:30人/0.7%
・無延滞者:31人/1.2%■専業主婦(夫)
・延滞者:311人/7.6%
・無延滞者:153人/6.1%■無職・失業中/休職中
・延滞者:642人/15.8%
・無延滞者:134人/5.3%■その他
・延滞者:132人/3.2%
・無延滞者:23人0.9%合計
・延滞者:4,073人/100%
・無延滞者:2,514人/100%※1.任期付常勤社(職)員:「常勤社(職)員(雇用期限がある)」の略。
※2.非常勤社(職)員 :「非常勤社(職)員 (週あたりの勤務時間が短く、雇用期限がある)」の略。出典: www.jasso.go.jp
ここ数年で増えていると言われる「非正規雇用」の人たちが返還できないで苦しんでいるということは想像できましたが、意外にも常勤の社員(職員)の人たちも延滞しているようです。
これにはデフレの影響で給料が上がらない、もしくは下がるという背景が影響していることが垣間見えます。
奨学金を返せない人たちの返せない理由は何なのでしょうか?
<延滞が継続している理由は?:人数/割合>
※理由は、1人2つまで回答のため、合計は100%にならない。
■本人の低所得:2,049人/51.1%
■本人が失業中(無職):605人/15.1%
■本人が学生(留学を含む):30人/0.7%
■本人が病気療養中:212人/5.3%
■本人の借入金の返済:796人/19.8%
■親の経済困難(本人が親への経済援助をしているため):758人/18.9%
■親の経済困難(親が返還する約束):710人/17.7%
■配偶者の経済困難:218人/5.4%
■家族の病気療養:230人/5.7%
■忙しい(金融機関にいけない等):139人/3.5%
■奨学金の延滞額の増加:1,201人/ 29.9%
■返還するものだとは思っていない:19人/0.5%
■その他:262人/6.5%<回答者数 4,013人>
やはり低所得という理由が半数を占めています。
それ以外にも、失業、病気療養、親の経済困難、家族の病気療養など、なにかしらのトラブルが奨学金の返済ができない理由となっているようです。
意外なのは返還するものだとは思っていなかったという理由ですね。
これは奨学金についての規約を読まず、安易に借りた人の結果だと思います。
奨学金の返還に苦しんでいる人の悲痛な声も、調べていく中で見つけることができました。
結婚してから、夫が高校と大学で借りていた奨学金を返済していることが発覚しました。結婚する前に、借金はないかと本人両親共に確認しましたが、ないとの返事をもらっていました。今は年2回のボーナスで、夏に高校、冬に大学の奨学金を返しています。彼とその両親は、利子がついていない以上借金にあたらないと言われました。ボーナスからお金を返済している以上、借金としか考えられないのですが…もうすぐ子どもも産まれますし、私はその奨学金のお金を学資保険に回したいです。これから我が子にお金がかかるのに、なんで夫が学生のときに使ったつけを払わなければいけないのか納得がいかないです
出典:yahoo知恵袋
奨学金を自己破産しようかと考えています。現在独立行政法人 日本学生支援機構より460万円の奨学金を受けており、利子を含め総額は640万円となるそうです。大学二年目に父が病気で無職無収入になり、その間ずっと留学費用にとためた200万円のアルバイト代で家族の生活費や医療費と、学費にしていました。そのお金もとうにつき、昨年大学を卒業したものの就職できず、現在も就職活動をつづけアルバイトをしながら父の介護をしています。
中略
母とも相談し「自己破産」したいといいました。確かにまだ二年目だし、猶予もされるけれど。辛い、です。面接に行っても大学のことや、今の生活を聞かれるとすぐに泣きたくなって、制御ができません。さらにもし自分に長期治療が必要になれば、もう…。借金があるから行きたいところもほしいものも我慢。服や靴に穴が開いていても隠せばいい、食事も病人じゃない私は毎食食べなくてもよい。しかし感情がもう限界な気がします。自分がおかしくなって辛くて借金って辛いって。父が亡くなっても借金しかないし自分には借金しか残らないんだ。市役所に行っても減免はこれ以上はできません、とか未納分あるんですけど…と言われ。母に頼るも「私にだって生活がある」と言われればお金のことは言えません。せめて自分の分の自己破産ができれば生きていけるのではと、思うのですが、やっぱり自己破産が怖いのか。何をしてよいのかわかりません。
出典:yahoo知恵袋
奨学金は「借金」であり、卒業後の人生にも大きく影響するということが二つの内容から痛いほど伝わってきます。
2つ目にもあるようにやむを得ない家族の事情が絡む場合もありますが、ここまで奨学金に苦しめられているということを知ると、安易に奨学金を借りるのも考え物です。
ここで奨学金についておさらいしましょう。
奨学金を受給している人の半数以上が日本学生機構の奨学金ですが、この法人が提供している奨学金には2種類あります。
1.第一種奨学金(利息なし)
対象者:学業や課外活動で優秀な成績を残しているが、家庭の経済的困窮により著しく学業に専念することが困難である生徒。
貸与額:入学年度、学種別、通学携帯により変動。詳しくは下記を参照ください。
2.第二種奨学金(利息あり/年利3%が上限)
対象者:経済的困窮により学業に支障が出る可能性のある生徒。第一種奨学金よりは基準は甘め。
貸与額:受給者が金額を選択することが可能。詳細は下記を参照ください。
平成27年度 入学者の貸与月額
■第一種奨学金
<国・公立>自宅通学:45,000円 /自宅外通学:51,000円/定額:30,000円
<私立>自宅通学:54,000円/自宅外通学:64,000円/定額:30,000円■第二種奨学金
<国・公立><私立>30,000円/50,000円/80,000円/100,000円/120,000円のいずれか。第一種奨学金では、学種別・設置者・入学年度・通学形態別に定められていますが、3万円を選択することもできます。また、第二種奨学金では、国公立・私立、自宅・自宅外にかかわりなく「5種類」の月額から選択できます。12万円を選択した場合に限り、私立大学の「医・歯学課程」は4万円、「薬・獣医学課程」は「2万円の増額」が可能です。貸与期間中に必要に応じ、貸与月額を変更することもできます。
出典: www.jasso.go.jp
実際に第二種奨学金を4年間借りた場合のシミュレーションをしてみました。
◇第一種奨学金(利息無し)
<国・公立>
・自宅通学の場合
45,000円×12ヵ月×4年間=2,160,000円
・自宅外通学の場合
51,000円×12ヵ月×4年間=2,448,000円
・定額の場合
30,000円×12ヵ月×4年間=1,440,000円
<私立>
・自宅通学の場合
54,000円×12ヵ月×4年間=2,592,000円
・自宅外通学の場合
64,000円×12ヵ月×4年間=3,072,000円
・定額の場合
30,000円×12ヵ月×4年間=1,440,000円
◇第二種奨学金(利息あり)
・月額3万円の場合
30,000円×12カ月×4年間=1,440,000円(1,483,200円)
・月額5万円の場合
50,000円×12カ月×4年間=2,400,000円(2,472,000円)
・月額8万円の場合
80,000円×12カ月×4年間=3,840,000円(3,955,200円)
・月額10万円の場合
100,000円×12カ月×4年間=4,800,000円(4,944,000円)
・月額12万円の場合
120,000円×12カ月×4年間=5,760,000円(5,932,800円)
( )の中は年利を上限3%で試算した奨学金の総合計です。
一番金額が大きいと600万円近くにもなり、これは、新社会人として就職してから借金が600万円ある状態でスタートしなければならないということです。
毎月2万円の返済をしていく場合でも300ヶ月間、25年間返し続けなければなりません。
「月2万ならなんとかなる」と思うでしょうが、社会人になれば所得税、住民税などの各種税金、車の購入費・維持費・車検代・重量税、住宅の購入・ローンの支払い、結婚式費用、友人や恋人等との交際費、光熱費、食費、出産費用、子どもの養育費等々、様々なところでお金を払わなければならない場面が発生します。
その時に「月2万×25年」は時に大きくのしかかる負担となるはずです。
単純計算すれば、22歳で大学を卒業して、完済するのは47歳です。
47歳まで大学時代に借りていた「借金」を返し続けなければならないことを考えると、すこし憂鬱になります。
Twitterではこの給付型奨学金の新設には好意的な反応が多いようです。
国民世論は政治を動かす。選挙結果が出る前に、こうして政治は動き始めた!<文科省>奨学金検討へチーム…返還なし、来月に初会合 – 北海道は素敵です!! – Yahoo!ブログ https://t.co/vPvDbDRhgV #ブログ #その他政界と政治活動 #無題
— sugiura taisuke (@mukaibaba) 2016年6月30日
いよいよ始まるね!どんな人にも嬉しいニュース!奨学金をこれから受ける高校生や家族のため、将来の日本のためにしっかり進めて貰いましょう😆✨️
文部科学省が返還不要の給付型奨学金制度の創設に向けた検討チームを新たに設置 – 毎日新聞 https://t.co/R91QM2ipOO
— ひがくぼきみお (@higakubo) 2016年6月30日
私は奨学金制度なんて廃止したらいいと思ってる
こんなの教育無償化したら簡単
奨学金制度に群がる利権廃止
文科省:奨学金検討へチーム…返還なし、来月に初会合 – 毎日新聞 https://t.co/y0SGkml78C
— 幸子 アモーレさかい (@sachiko_515) 2016年6月30日
日本が海外に投資するのも結構なことですが、日本の若者に投資をすることはもっと重要だと思う。
良い方向に進んでもらいたい。
<文科省>奨学金検討へチーム…返還なし、来月に初会合https://t.co/jZ4i3xPR5d— クルマエニ by ドリドリ (@doridoriroom) 2016年6月30日
最後に、大学は何のためにいくのか、考えてみましょう。
大学とは、学術研究および教育における高等教育機関であり、講義を受ける人間は「生徒」ではなく自ら学びを得ようとする「学生」というくくりになります。
自ら学ぶ姿勢が求められるため、受ける講義も自分次第でコントロールが可能になります。
しかし、これには「自己責任」が付随します。
基本的に、大学は「教育の高等機関」です。
この高等期間である大学をいかに有効活用するのかは自分次第になります。
上記で大学は「教育の最高機関」という話もしましたが、学ぶここと同等、もしくはそれ以上に遊ぶことも大事だと私は考えます。
「遊び」は人生を充実させるために必要なものであり、「遊び」でしか学ぶことができない事もたくさんあります。
大学は、選ぶ学校や学部にもよりますが、自分で受ける講義を選択できるので基本的に中学・高校よりも自由です。
その中で、学生としてやることはきちんとやり、あとはいかに精一杯遊ぶか、これは社会に出ても大いに役立つスキルとなるはずです。
大学では短期留学、インターン、イベント主催等、様々な
夏休みも高校と比較にならないくらい長期の休みがあるため、この期間に例えば世界一周するなど、社会人になったらできないことを沢山経験したほうがいいと思います。
また、最近では学生が起業するというのもより一般的になってきました。
festivoより
こちらは日本最大級の若者向け起業支援団体のHPです。
この団体の会員には多くの大学生が登録しています。
このように、大学以外の様々な所で活動している学生には「学生」というだけで「向上心が強く意識が高い若者」というイメージも作れるため、後の就職活動の時にも役立ちます。
また、様々な活動をしていくと普通では出会えない人達にも出会うことができます。
その出会いは、もしかしたらあなたの人生を変える出会いに成なるかもしれません。
学生は勉学が本文ですが、それだけではありません。
少し話が逸れましたが、今回は「給付型奨学金の新設へ国が動き出した」というニュースから現状の奨学金に苦しんでいる人、奨学金のおさらいまでしました。
これからの時代は勉学だけに勤しむのではなく、遊びも、その他の活動も含めて行動力がモノを言う時代になると思います。
大学をどのような場所にするのかはあなた自身が決めることです。
そのために奨学金は必要である場合もありますが、借りるときは慎重に考えてから借りましょう。
また、国としても現状の奨学金に関する社会問題の解決や、グローバルリーダーを排出するために今回の「給付型奨学金」への検討を始めたと思います。
予算がまた大きく動くでしょうし、給付する側もされる側もこれからの日本をけん引できるようにつとめてほしいと思います。
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